たくさんの死者を出した自動車事故

私の周りでは事故で亡くなる友人が多い。もう数え切れないくらいの友人が事故で他界してしまった。

その中でも一番悲惨な事故は大学の後輩が起こした事故だ。

車通りが少ない見通しの悪いカーブが続く片側1車線の山道で、4人の大学生の男の子が車に乗っていた。運転していたのは仲のいい後輩だった。
それなりに飛ばしていたらしい。前を走る車に追いついたけど、その車が遅かったらしく、イライラしたんだろう。
血気盛んな大学生、追い抜こうと反対車線に出た。見通しの悪いカーブだった。対向車が来ていることに気づかなかった。
反対車線にはみ出した後輩の車は対向車と正面衝突した。追い抜こうとしていたのだから、スピードもそれなりに出ていた。

対向車には運転席と助手席に2人乗っていた。まだ20代前半だった。正面からぶつかった２台はどちらもグチャグチャに。あろうことか、6人中5人が死んでしまった。唯一生き残ったのは後輩の車の運転席の後部座席に乗っていた1人だけだった。1ヶ月近く植物人間状態で、奇跡的に意識を取り戻した。

みんな病院に運ばれた。
私は後輩の彼女と仲が良かったんだけど、彼女がすぐに駆けつけたときには、もう息も絶え絶えで血まみれどころか、手も足も顔も、原型をとどめていなかったらしい。
医者も、もう手の施しようがないと、手術室にさえ運ばれなかった。
間もなくして、その後輩は泣き叫びながら自分を抱きしめる彼女の腕の中で息を引き取った。

翌日、私は知らせを受けて彼女の元に駆けつけた。彼女の腕や首や爪の間に、まだ後輩の血がついていた。彼女は放心したまま、血のついた指に愛しそうにそっと口付けをしていた姿が忘れられない。

二人は大学卒業と同時に結婚することになっていた。実家同士も近い方がいいだろうと、彼女一家が彼の家のすぐ近くに引っ越したばかりだった。
これから、どうしたらいいんだろう…と彼女はつぶやいた。私もたまらなかった。こんなに悔しいことはなかった。どこにこの悔しさをぶつけたらいいのか、その先もなかった。
事故の相手の2人も同乗していた2人にも申し訳ない気持ちもいっぱいある。でも本人はもういない。

こんな悲惨な事故はもう二度と起こって欲しくない。