親父の眼鏡と、ウルトラアイの思い出
36年前の親父は、おっかなかったんだ。
地下鉄の運転士でさ、ガラッパチでさ~。
親父は髪の毛をとかしたことが無い。
爆発した髪の毛で、閻魔さんみたいだったよ。
ある日、親父が明番で朝から帰ってきて、グ~グ~寝てたんだ。
その隙に、置いてある親父のメガネをくすねてさ。
当時ウルトラセブンの変身アイテム…
ウルトライアイに、作り替え始めたんだ。
ちなみに、当時のオイラは5つかな。
親父のメガネは黒縁でさ、ウルトラアイっぽくないんだ。
オイラは、ご近所を回って赤いセロファンを調達してきてさ。
ハサミで丸くカットして、レンズのところに大和のりで貼ったの。
全然、似ても似つかず……。
オイラも子供だから、記憶に頼ると、ますます似てない。
一人悪戦苦闘してたら、親父が起きてきて見つかった。
「バカヤローっ!」
マッハで逃げようと思ったんだけど…、反応が遅れた…。
あまりにおっかなかったから、ガキにとっちゃ怒られるのも命がけさ。
ゲンコツをもらうかと思って、肩をすくめたんだ。
レンズは糊でベタベタだし…。
そうしたら、ちょっと違っててさ。
「ウルトラアイはフレームが赤だろっ!ちゃんと、思い出せっ!」
って言って、メガネを洗ってさ。
紙にクレヨンで、ウルトラアイの設計図を書き始めたんだ。
「こうなるように、作ってみろ!!」
って言って、厚紙を持ってきてね。
完成するまで、つきっきりでさ。
教えるんだけど、手は出さない…。
でも口は出す妥協しないんだ、子供だろうが何だろうが。
格闘すること半日…。
おかげで、すんげぇカッコいいのができたんだ。
そうしたら、またグ~グ~寝ちゃったよ。
親父は、衣食住に係わることは、オイラに対して妥協なし。
特に刃物いついては、徹底的でさ。
包丁で、いくつリンゴを剥かされたことか……(泣)。
当時はやかましいと思ってたけど、今では感謝してるね。
オイラが親父の域に、達してないのはさ。
姫の工作なんか、オイラが熱くなっちゃっうんだ。
口は出すは、手は出すは、ちょっかい出すは……ね。
見て、教えるだけなんて、窒息死しちゃうよ(笑)。
まだまだ、修行が足りねぇよ……うん
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