6.
ヘイポー |
2011-11-11 08:18 |
~どっちさんの日記より~
不定期連載■骨髄移植(6) ドナーにとってのリスク(軽)
忘れた頃にやってくる不定期連載です。
骨髄移植における提供者の「リスク」というのは多くの人が気になるところだと思います。そして、彼らが認識するところでは、痛い思いをして、数日間病院に拘束され、その上見返りは何もない、場合によっては後遺症が残ることがある・・・というようなところだと思います。と言っても、結局「リスク」というのは確率と程度の問題。そして、それらに対する各人の捉え方次第というのが私の意見です。
手術をするにあたってのリスクという点では、他の手術をするときと同様に「全身麻酔をしたら意識不明のまま戻らない」などのようなリスクです。ただ、自分の病気を治すための手術と、赤の他人の病気を治すために健康な自分の身体を提供するというのには、大きな隔たりがあると思います。
そういう意味でも、財団はすべてのリスクを公開し、提供者が少しでも疑問に持つことは事前に確認し、断ることもできるようにしています。この段階で確認しないまま最終同意の判を押したら簡単には断れなくなります。その理由は前述の通りです。((3)参照)
それでは、そのリスクの一部を挙げて行きましょう。まずは、軽いけれどかなりの確率でリスクを負うことがあるものです。
手術をしたら誰でも感じること、「痛い」ということです。骨髄採取のために腰骨へ太い針を刺すのですが、この痛みがしばらく残ります。手術の最中は全身麻酔で痛みはまったくありませんが、麻酔が切れたところから痛みは始まります。人によって感じる痛みは違うでしょうから比較なんてできないのですが、術後アンケートによると86%の人が採取部位の痛みを挙げており、5%の人が「とても痛い」と言っています。
私の体験から申しますと傷を負った時のような激しい痛さではなく、腰痛のような身体の奥の方でジワジワと神経を刺激されているような「ニブい痛み」です。
手術の後~翌日は、足をひきずらないと歩けないくらいでした。2,3日目はゆっくりなら歩けるけれど階段のときはかなり気を遣う歩き方になります。5日目には痛みはすっかり気にならなくなっていました。術後アンケートによると、87%が1週間以内に普通の生活に戻れています。しかしながら、1ヶ月以上かかっている人も0.7%ほどいるようです。
「手術翌日の歩行」というアンケートでは、「歩行に問題なし」が72%、「ほぼ歩行可能」が27%で、99%が翌日には歩けているようです。
その他に痛みが残ったと挙げられている箇所には、「のど」(全身麻酔時に管を入れるため)、「排尿通」(手術時間によっては尿道にカテーテールを入れて排尿するため)、「点滴部位」、「おしり辺り」があります。
「のど」は、術後目が覚めてから1時間ほど違和感が残っていましたが、すぐに気にならなくなりました。「排尿通」は術中にカテーテルを使わなかったので関係なく、「点滴部位」は点滴を打った看護師がお上手ではなかったらしく、青い痣が残ってはいましたが痛みはありませんでした。
そういえば、「おしり辺り」は1週間くらいカユかったです。術後、採取部位は清潔を保つために、ガーゼを当ててテープで固定し、数時間毎に取り替えていました。お尻の上に掛かるそのテープの粘着力が強く、かぶれてしまったようです。かゆくて掻いたところがミミズ腫れのようになっていました。掻いたために軽く出血もしていて、数日間はお風呂に入る度に沁みました。これをアンケートに「痛い」と答える人もいるのかもしれません。
また、痛みからか「発熱」する方もいるようです。38℃以上の発熱が約10%の人にあるようです。
さらに、薬を処方されます。私は血液の状態を見て貧血防止のための「鉄剤」を処方されました。(約30%が処方されている)
他に薬の処方には「抗生物質(74.4%)」「鎮痛剤(38.5%)」「解熱剤(12.5%)」があるようです。どれも短期間ですし、症状がないけれど念のために処方されている方もいるのかもしれません。
他に軽いところでは、痛みとは違うのですが、以下の「精神的苦痛」があります。
・術前後、病室への拘束される。
・術前の浣腸とT字帯や圧迫タイツ着用の辱めと受ける。
・おいしいとは言えない病院食を食べさせられる。
と、普通の病人としては当たり前のことです。
私はまったく気になりませんでしたし、こんなことで精神的苦痛を訴える人が骨髄提供をする人にいるのだろうか?と疑問に思いますが、医者からは事前説明として受けました。
次回は合併症など重い症状を引き起こした事例を見ていきましょう。
(つづく)
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5.
ヘイポー |
2011-09-02 11:29 |
~どっちさん日記より~
不定期連載■骨髄移植(5) 事前検査と最終同意面談
骨髄移植の不定期連載5回目です。
事前検査日、会社は午前半休です。
ドナーコーディネイターと初対面。コーディネイターはドナーの検査~手術を円滑に進めるために付添いから何から面倒を見てくれる財団からのボランティアの方です。
病院へ行くと、先生直々に出迎えに来てくれて「このたびはありがとうございます」と唐突にお礼を述べられ、休診の時間帯である小児科の先生の診察室へ案内されました。
その場所をお借りして、送られてきた小冊子「骨髄提供者へなられる方へのご説明」を使ってコーディネイターさんより一通りの説明。「何でも質問受け付けます」となっているがその場でポンポンと出てくるもんでない。また、答えられない質問だってある。例えば「患者さんは今どんな状態なんですか?」「患者さんはどんな人なんですか?」、これらは教えることができない内容なのである。あれやこれやと約1時間の対談。
小児科で体重と血圧の測定と採血。この日はクリスマスも近い12月だったので、サンタクロースの絵や飾りつけでいっぱいの部屋でくつろぎながらのんびりと検査。
体重は45kg超えていればOKということで、服を着たままの大雑把な測定でしたが、まぁ問題ないでしょう。
採血はこの日は2ml×4本を採ったと思います。血を抜いてくれるのが、看護師の女性の方ではなく、先生が自ら採血。「もしかして、ひさびさにやるの?」ってくらい危なげで、腕に寝かして刺した採血の針が起ちあがって「先生、痛いです!」というような状況でしたが、すぐに終わりました。約30分ほどで終了。
そして、第2回で書きましたHLA型の話しです。ドナー登録時には3つの型しか検査していませんが、今は4つの型が一致するのが条件となっています。なので、今回新たにC座の検査もしなくてはなりません。それ以外にも血液の状態が移植の条件になってきますので、採血は必須です。
これを聞いて「まだC座が適合しなければ移植はできないのだ」と、かなり気が楽になりました。C座は10パターンあります。「まぁ、移植はないかな」と思っていました。
2週間が過ぎ年が明けて、担当コーディネイターから「適合」とのご連絡。10パターンあるC座が偶然一致したのか?近ければOKなのか?パターンの分布率に偏りがあるのか?それはなぞなのですが「適合」ということなので次は『最終同意面談』です。
再び調整医師のいる病院へ訪れました。第三者の弁護士立会いのもと、財団、調整医師、そして私ドナーと親族(妻)との間で移植の骨髄移植手術の最終同意を行います。この同意の後、患者さんは手術に向けてのスケジュールが組まれるのです。ここで骨髄提供を決めたら後戻りはできないです。
第1回で述べたとおり、手術の前準備として患者さんの血を作る細胞は、薬や放射線治療ですべて破壊されます。身体が弱っている状態なのに、身体を守るべき血液がその働きをしないのです。患者が手術準備OKの状態なのに、提供者の都合で中止や来月に延期などということはできないのです。そのための最終同意面談です。
なお、調整医師は移植手術をやる医師とは別の病院の方です。移植手術をする病院は、この後で調整医師のいる病院以外から選ばれます。
病院側は移植手術をすることにより報酬を得ているので、事前検査の段階で「ドナーがちょっと移植できる基準に満たないけれどOKにしちゃえ」などということができないようにしている仕組みのようです。
最終面談は前回コーディネーターさんから説明を受けたことで重要な箇所を妻にも説明し、最後に(印)を押して証書を交わしました。
説明ではリスクのことも詳しく話しました。移植手術により提供者に何かが起こる可能性のことです。
始めに送られてきた通知と一緒にA4裏表で1枚、過去のすべての事故や、痛みや小さな傷に至るまでのリスクの統計が載った紙が入っていたのでした。人によっては、これを読んだら骨髄提供に二の足を踏んでしまうような内容です。骨髄提供候補者には一番興味のある内容だとも思います。
興味ありますよね?
(つづく)
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4.
ヘイポー |
2011-09-02 11:07 |
~どっちさんの日記より~
不定期連載■骨髄移植(4) ドナー候補者選出の連絡が来る
忘れた頃にやってくる不定期連載です。
妻子が実家に帰っていて、ヒマなので書きました。
では、連載記事、行ってみましょう。
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不定期連載■骨髄移植(4) ドナー候補者選出の連絡が来る
骨髄ドナー登録が完了すると半年に1回、配布物が届きます。「骨髄バンクNEWS」という数ページのもので、体験談や登録状況、各種関連イベントなどが載っています。
それ以外は骨髄ドナー登録が完了してからの生活は何も変わりません。
私が「ドナー候補に選出されました」という通知を受けるまでは登録から5年でした。人によってかなり違うと思います。その期間がどのくらいになるのか?それは誰にもわかりません。
何せ、HLA型のA座−B座−C座−DR座の4つの座で照合すると言ってもどのようなマッチングがなされているのかもわかりません。型の完全一致ではないと思います。
また、例えば「日本人はA型が4割」というような民族による偏りもあるということをコーディネータさんから伺いました。日本は単一民族国家なので混じり気が少なく諸外国と比べて適合の確率は比較的高いようです。
そして、その日突然に、骨髄移植推進財団より封書が届きました。2010年11月後半のことです。
骨髄移植のドナー候補に選ばれたことの通知、小冊子「骨髄提供者へなられる方へのご説明」(移植手術までの流れやそれぞれの段階の詳細な説明が載っているもの)、そして、今後のことの説明、問診票とアンケート(A4用紙計5枚)が同封されていました。
通知はちょっと普通とは違いました。「迅速コース」を患者が希望しているという通知が入っていたのです。
移植手術には「通常コース」と「迅速コース」とがあって、通常なら6ヶ月、迅速ならその半分の3ヶ月くらいで候補者選出→検査→移植手術までを行います。
「迅速」というのは、つまり患者さんが急いでいるということ。理由は知らされませんし、いろんな理由があるのかと思いますが「今は身体の状態が良くて、なるべく早く手術してしまいたい。」悠長なことは言ってられない状況だと推測されます。でも、真意はわかりません。
コーディネイト中は、この「何もわからない」という不安感がずっと付きまといました。(この後もたびたび「何も知らされない。聞いちゃいけない。」ことによる不安感は出てきます。)
問診票・アンケートの内容は提供意思確認、自分の過去と両親の病歴、海外滞在/渡航歴、検査のために通う場所の希望などです。
意思確認はこれが最終確認ではありません。(まだやめるチャンスはあります。)
検査のための場所は、多ければ多いほうが良いのかと思ってなるべくたくさん○を付けました。結局半分以上は○を付けていたと思います。
「電車で1時間以内で行ける所なら大丈夫かな」くらいの感覚でした。駅から歩くキョリとかは全然考えませんでした。
アンケートを送るとすぐに財団の初期コーディネイト担当者より電話があり。まずは第1回の事前検査だと云う。
そして、担当コーディネーター(移植の説明から検査、手術、術後のケアまで面倒をみてくれる財団から派遣されてくる方)が決まり、その方から電話が来た。
指定された病院は台東区の大きな病院。地下鉄を2本乗り継いで、駅から10分強歩くところ。大病院は駅から遠いところが多い。
検査にあたる先生の当直日(曜日指定)の中で自分のNG日を告げる。約2週間後の午前中に検査に行くことに決まった。
また、検査までの間は何度かコーディネーターさんから電話が来て、家族(妻)・両親への説明と同意が得られたか否かの確認。妻は一緒にドナー登録したくらいなので、OK。両親は土日を利用して実家へ行き、骨髄移植というのをやることを説明したが「同意」と言うほど明確な回答は得られなかった。コーディネーターへは、もやっと「同意していた」と伝えた。
コーディネーターに聞くと事前に親の同意を取っておかないと、後から家族間の諍い・争いに発展する惧れもあると云う。
そして、勤め先への「同意」の確認。「本人が病気でもないのに有給で数日休む」ということなので、私が勤めているような古い体質の(お役所的な)会社ならば嫌がられるだろうと考えた。直属の上長だけに伝え、そこから上への報告は直属の上司に委ねることにする。しばらく内緒にしておくとのこと。まだ候補者であり、手術が決まったわけでなく、最終同意もまだだからというのもある。直属の上長は「すばらしいことだ!」と物分りも良く難なくクリア。こちらの最終同意が済んで、「いよいよ手術」というもう後戻りできない状態になってから「会社の命令でやっぱりダメ」なんてのは患者を見殺しにするようなものなので、絶対避けなくてはならないことなのだ。
さあ、まずは検査だ。自分の健康状態、血の状態に何か不都合があったらダメだ。
(つづく)
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3.
ヘイポー |
2011-09-02 09:54 |
~どっちさんの日記より~
不定期連載■骨髄移植(3) ドナーになりたい
不定期連載、骨髄移植の3回目です。
骨髄移植のドナーになるにはどうしたらよいのか?いくつか方法はあるようですが「献血ルームで献血のついでに」というのが一番お手軽ではないでしょうか。
私は定期的に献血へ通っていたのですが、本当に「ついでに」という感覚で登録しました。妻が登録するというので、あまりよくわからないままに一緒に登録したという感じです。もちろん費用はかかりません。
献血ルームには骨髄バンクのドナー登録に関するパンフレット「チャンス」が置いてあります。受付で骨髄バンクに登録したい旨を申し出ると、登録申込用紙をもらえます。これに記入し、そして登録用の採血をするだけです。
通常の献血前には必ず採血をして、献血が可能か否かの検査をしますが、この採血のときに1本分(2ml)多く血を採るだけです。HLA検査用の血は「骨髄ドナーセンター」へ送られてHLA型のA座、B座、C座、DR座の4つの座(※第2回記事参照)を検査し、登録されます。
登録には条件が設けてあります。と言っても体重・年齢くらいなので、大部分の方が登録可能です。条件は以下のとおり。
(1)骨髄・抹消血管細胞の提供の内容を十分に理解している方
(2)年齢が18歳以上、54歳以下で健康な方
(3)体重が男性45kg以上、女性40kg以上の方
「健康な方」ということで以下の方はご遠慮くださいと書かれています。事前検査でNGとなりそうな条件という意味でしょう。
・病気療養中または服薬中の人(特に気管支ぜんそく、肝臓病、腎臓病、糖尿病など、慢性疾患の方)。
・悪性腫瘍(ガン)、膠原病(慢性関節リウマチなど)、自己免疫疾患、先天性心疾患、心筋梗塞、狭心症、脳卒中などの病歴がある方。
・悪性高熱症の場合は、本人または家族に病歴がある方。
・最高血圧が151以上または89以下の人、最低血圧が101以上の方。
・輸血を受けたことがある方、貧血の方、血液の病気の方。
・ウイルス性肝炎、エイズ、梅毒、マラリアなどの感染症の病気の方。
・食事や薬等により呼吸困難などの症状が出たことがある方や、高度の発疹の既往がある方。
・過度の肥満(BMI30超)の方
登録が完了したら、あとは「適合」となるのを待つのみです。
あまりにも簡単に登録できてしまいますが、晴れて「適合」となっても手術に到るまでに、ドナーに"もしも"のことがないように何度か事前検査があります。さらに最終面談で移植手術に同意を示すまでは断ることができます。
最終面談で同意を示したら、その後は基本的に断れないのですが、提供者の健康状態の方が優先ですのでドナーの身体に"もしも"のことがありそうな場合には移植手術はなしとなります。逆にそれほどの理由がないと、最終面談以降は断ることができないということです。
(つづく)
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2.
ヘイポー |
2011-09-02 09:52 |
~どっちさんの日記より~
不定期連載■骨髄移植(2) 白血球の血液型
前回、HLA型は白血球の血液型であるとご説明しました。
赤血球の血液型、つまりO型とかB型とかはみなさん自分が何型であるか知っていると思います。
HLA型はみんな普通知りませんね。検査したらわかるかと言うと、検査しても教えてもらえません。その理由は後日ご説明するとして、HLA型について解説しましょう。
HLA型(Human Leukocyte Antigen:ヒト白血球抗原)は、大きく分けると、クラスⅠのA座/B座/C座とクラスⅡのDR座/DQ座/DP座 という座で分類できます。
例えば「A29(19)-B63(15)-Cw7-DR17(3)-DQ3-DPw2」というように表記します。
各座に10~40種類くらいありますので、その組み合わせは数万種類となるわけです。
骨髄バンクにドナー登録する際に、そのうちのA座、B座、C座、DR座の4つの座を検査して「骨髄ドナーセンター」へ登録します。なお、C座は2009年8月から登録の対象となったので、私が登録した2006年にはA座、B座、DR座の3つの座だけが登録されていました。
なぜ数年前からC座も検査するようになったかと言うと、C座の不適合により拒絶反応・感染症が起きるケースも多いことがわかり、なおかつ、登録者が多くなってきたので、C座まで見ても適合者を見つけられるようになったからです。
C座を登録していない人が骨髄ドナー候補になった場合にはどうするかというと、候補者に選ばれたら、そのときにC座を調べます。私も今回C座を調べて「適合」となりました。適合というのもぴったり一致ではなく、「これとこれは相性が悪い」などという独自の基準をもっているのだと思います。(これらのマッチング条件ももちろん公開されていません。)
HLA型も、ABO型と同様に親からの遺伝で決まります。
A座/B座/C座/DR座/DQ座/DP座で、それぞれどちらか1/2の確率で受け継ぐわけです。つまり、親子であれば適合率はよくて50%ですので、骨髄移植のドナーにはなれません。
兄弟その他親近者であれば25%くらいの確率でドナーになれるそうです。
近親者に適合者が見つからない場合は、骨髄ドナー登録されている中から適合度の高い人を探すわけですが、2011/3月現在骨髄バンクのドナー登録者は約38万人を超えました。今なら95%以上の確率で適合者が見つかるそうです。
(つづく)
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1.
ヘイポー |
2011-09-02 09:50 |
~どっちさん日記より~
不定期連載■骨髄移植(1) 骨髄移植手術って?
3月に骨髄移植手術をしました。
というわけで、骨髄提供を通して得た骨髄移植の知識と個人的な感想を(不定期ながら)連載して行きたいと思います。
まず基本用語について。
「骨髄」というのは、骨の中心にあるスポンジ状の造血組織(造血管細胞)で、骨髄液の中にあるこの細胞が赤血球/白血球/血小板などの血液細胞を作り、それが新しい血液となります。生きている間は常に新しい血を作っていますし、どこの骨の中にもあります。
血液を作る細胞が病気に冒されると、「白血病」に代表される血液の病気になるのです。
そのようなうまく機能しない造血管細胞を、別の健康な細胞に置き換えると病気が治るわけです。
その置き換えの手術が「骨髄移植」であり、健康な骨髄液(の中の造血管細胞)の提供者が「骨髄ドナー」です。
新しい造血管細胞を移植するときには、患者さんの造血管細胞はなくなっていないといけません。つまり自分では血を作ることができなくなります。
手術の前準備として患者さんの血を作る細胞は薬や放射線治療ですべて破壊します。
白血球は感染症を防ぐ大事な細胞ですので、その間は非常に感染症にかかりやすくなり、ちょっとした風邪でも命取りになります。赤血球が少ないと貧血にもなりやすいです。血小板が少ないと出血しても固まらないので血が止まりません。
そこでドラマでよくあるように「無菌室」で過ごすことになるのです。
造血管細胞にも血液型があり、合わない型を移植したら拒絶反応や重症感染症で命を落とす確立が高くなります。
この血液型が「HLA型」と言われるもので"白血球の血液型"と思ってもらって良いと思います。
一般の血液型は赤血球でABO型とRH±の組み合わせですが、HLA型は数万通りになります。ぴったり一致する必要はないのですが、それでもなかなか移植が可能な型の人を見つけるのは難しく、そのために「骨髄バンク」というものが20年ほど前に出来て、ここで患者とドナー登録されている提供者とのHLA型が管理され、マッチングのコーディネートを行うようになったのです。
(つづく)
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